使われない福利厚生はなぜ生まれるのか?「制度はあるのに使われない」問題の本質
- 2月20日
- 読了時間: 5分

福利厚生は“充実度”より“摩擦の少なさ”で決まる
昨今、企業の間で静かに共有され始めている課題があります。
それは、「福利厚生の制度は整っているのに、十分に利用されていない」という現実です。
福利厚生は、用意することが目的ではなく、社員に利用されて初めて意味を持つ “投資” です。つまり、利用されない福利厚生は、経営から見れば “ただのコスト” になってしまうのです。
いま問われているのは、制度の数や豪華さではなく、どれだけ “利用時の摩擦が少ないか” という視点。“自然に使われる設計” になっているか、見直すべきポイントを解説します。
〈背景〉福利厚生を充実させても利用率が伸びない現実
レジャー優待、チケット割引、健康支援プログラム、会員制サービス —— 福利厚生の選択肢は年々広がっています。
多様化する価値観に対応するため、企業は制度の幅を増やしてきました。「幅広く用意すれば誰かには刺さる」という設計思想です。
しかし実際には、福利厚生の数は増えたものの「あるだけ」の状態となり、利用率や満足度が比例していないという課題が、徐々に顕在化しています。
この状態では、福利厚生は “投資” ではなく“固定費” として扱われてしまいます。
なぜ “あるのに使われない” のか
人事・総務の現場では、次のような声が多く聞かれます。
制度は整っているが、利用率に偏りがある
一部の社員しか活用していない
社員から「存在は知っているが使っていない」と言われた
多くの場合、問題は制度の内容そのものではありません。
ログインや事前申請、書類提出や承認フローなど、利用のたびに発生する “手間” が心理的ハードルになっている可能性があります。
特に、ワークライフバランスが重視される現代において、業務の合間に「福利厚生を利用するための”手続き”」が発生した瞬間、 福利厚生は “便利な制度”から“面倒な制度”へと変わります。
制度の価値そのものではなく、心理的コスト(手間・時間・意識負担)が利用率を左右しているのです。
データから分かる “日常に組み込まれた制度” の利用率
福利厚生は、「ある」ことと「使われている」ことが一致しない。このギャップが、現在多くの企業で課題となっています。
こうした背景から、近年注目されているのが“摩擦ゼロ”の福利厚生設計です。
福利厚生の利用実態を示す公的調査があります。労働政策研究・研修機構(JILPT)が2020年に実施した調査※では、福利厚生の「制度・施策がある」と回答した人のうち、実際に利用が「ある」と回答した割合が示されています。
全48種中、利用率が高い制度・施策は以下の通りです。
1位 | 食堂 | 58.9% |
2位 | 食事補助 | 53.4% |
3位 | 社員旅行の実施・補助 | 47.3% |
4位 | 医療施設(診療所等) | 43.4% |
5位 | 社内預金制度 | 39.5% |
※)独立行政法人 労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査―企業/従業員アンケート調査結果―」
注目すべきは、ほとんどの制度・施策の利用率が50%に満たない一方、「食」に関わる制度が上位に並んでいる点です。
また、当社が2026年2月に実施した導入企業向けアンケート(n=163)でも、87.7%が「社食を利用している」と回答しました。

これらに共通しているのは、 申請のタイミングを強く意識しなくても利用できる“摩擦ゼロ”の設計であることです。
利用条件が限定的な制度や、特定のタイミングでのみ利用する制度は、利用者が限定的であることに加え、申請手続きなどによる心理ハードルが高くなります。

一方で、オフィス内で毎日利用できる社員食堂や社内カフェのように「そこにあるから使う」という設計は、日常業務の延長線上に組み込まれているため、多くの社員が利用でき、心理ハードルも低く、安定した利用率に繋がります。
つまり、制度の“中身”以上に、日常に組み込まれているかどうかという“設計”が、利用率向上の鍵を握っているのです。
福利厚生は“イベント型”から“日常型”へ
福利厚生の満足度を高めるために必要なのは、新しい制度を追加することではなく、使われない原因を取り除くことです。
申請を前提にしていないか
特別な行動を求めていないか
日常業務から切り離されていないか
こうした視点で見直すことで、「ただ“あるだけ”の福利厚生」を減らすことができます。
福利厚生は今、
イベント型(使うときに意識する制度)から
日常型(働く中で自然に利用される制度)へ
移行しつつあります。
社員に頑張ってもらう制度ではなく、自然に使ってしまう制度へ。
この設計思想は、「第三の賃上げ」や「出社体験の再設計」とも密接につながっています。
「日常型」の福利厚生を検討している方へ
利用率を安定させたい
形だけで終わらせたくない
出社体験やコミュニケーションも改善したい
そうした課題を持つ企業にとって、日常に組み込まれる社員食堂や社内カフェを始めとした食事補助は、有力な選択肢の一つです。
そこにあるから使う。勤務していれば自然と制度との接点が生まれる。この「意識しなくても使われる」という利用摩擦ゼロの状態が、 利用率の安定に繋がっています。
ボンディッシュでは、企業ごとの条件やお悩みに合わせたご提案を行っています。
自社の規模感でも成立するのか
税制面での問題はないのか
どのような補助形態が現実的なのか
厨房が設置できなくても食事提供ができるのか
構想段階からのご相談も大歓迎です。社員の皆様に“使われる”福利厚生の設計をお手伝いいたします。
※本記事は「2026年 福利厚生トレンド」連載の一部です。







